弊社では、
・文章の書き方
・文章の組み立て方
・各種マーケティング
・心理学
・色使い
といった「さまざまなテクニック」を使いながら、集客・受注に効果のある販促ツール作りの支援をしています。
こうした「テクニック」に対するクライアントさんからのニーズはとても高いのですが、世の中にはテクニックなんていっさい使ってないのに≪本当に人の心をズーン…と打つ文章≫というものがあります。
今回はそんな「心を打つ手紙」をご紹介します。
(手紙といっても、私が小学校3年生の時に密かに想いを寄せていた女の子からこっそり渡された「給食をくちゃくちゃかまないでください」という手紙ではありません)
10年前の私が衝撃を受け、現在のマーケティングに対する考え方の「根っこ」となった手紙です。
この手紙と出会ってなければ、この仕事を続けてなかったと思います。
その手紙とは、黄熱病の研究で有名な「野口英世」のお母さん、「野口シカ」の手紙です。
■【野口英世について】
現在1,000円札にもなってる野口英世。そんな英世が幼少の頃、いろりに落ちて左手に大ヤケドを負ったことは伝記などでご存知の方も多いと思います。その事故を自分の不注意のせいだと感じた母シカは、昼夜問わず懸命に働き、貧乏な家庭ながら英世を立派に育て上げました。過酷な労働だったにも関わらず、シカが弱音を吐くことは一切なかったと言われます。
やがてアメリカのロックフェラー研究所に招かれた英世は、蛇毒や梅毒、黄熱病の研究に熱中し、世界的な名声を得ます。シカの影響からか、英世の働きぶりも尋常ではなく、同僚からも「いったいいつ寝てるんだ」と心配されるほどだったそうです。渡米後12年経った頃。英世の下に、日本に残してきた母「シカ」から突然一通の手紙が届きました。
息子のいない寂しさに、ついに耐え切れなくなった母シカが、学問がなく、字がまったく書けなかったにも関わらず、囲炉裏の灰で一生懸命字の勉強をして書いた手紙・・・。
それが今回ご紹介する「野口シカの手紙」です。
詳しい訳文は後で載せます。まずは原文(若干の訳あり)のまま読んでみてください。
■野口英世の母、野口シカの手紙
おまイの。しせ(※出世)には。みなたまけました。わたくしもよろこんでをりまする。なかたのかんのんさまに。さまにねん(※毎年)。よこもり(※夜籠り)を。いたしました。べん京(※勉強)なぼでも。きりかない。いぼし(※烏帽子村。近所の村)。ほわこまりをりますか。おまいか。きたならば。もしわけかてきましよ。はるになるト。みなほかいド(※北海道)に。いてしまいます。わたしも。こころぼそくありまする。ドカはやく。きてくだされ。かねを。もろた。こトたれにもきかせません。それをきかせるトみなのれて(※飲まれて)。しまいます。はやくきてくたされ。はやくきてくたされはやくきてくたされ。はやくきてくたされ。いしよのたのみて。ありまするにしさむいてわ。おかみ。ひかしさむいてわおかみ。しております。きたさむいてわおかみおります。みなみたむいてわおかんておりまする。ついたちにわしをたち(塩断ち)をしております。ゐ少さまに。ついたちにわおかんてもろておりまする。なにおわすれても。これわすれません。さしんおみるト。いただいておりまする。はやくきてくたされ。いつくるトおせてくたされ。これのへんちちまちてをりまする。ねてもねむられません
ここから訳文です。
■訳文
お前の出世には、皆、驚きました。私も喜んでおります。中田の観音様に、お前の無事と成功を願って、夜通しお祈りをしました。(※シカは英世の渡米後、自宅から遠い中田観音までお参りに行っていた。)勉強はいくらしても、きりがない。烏帽子村(近所の村)の人から、借金を返してくれと、催促されて困っていますが、お前が帰ってきて、立派な医者になった姿を見せたら、申し訳ができるでしょう。春になると、皆、北海道に移住して行ってしまい、私も心細くなります。どうか早く帰ってきてください。お前にお金をもらった事は、誰にも聞かせません。それを聞かせると、みんな飲まれてしまいます。早く来て下さい。早く来て下さい。早く来て下さい。早く来て下さい。一生のたのみです。西を向いては拝んでおります。東を向いては拝んでおります。北を向いては拝んでおります。南を向いては拝んでおります。毎月、一日には塩断ちをして、願をかけて祈っております。栄昌様に一日に拝んでもらっています。これだけは決して忘れません。お前の写真をおしいただいて無事と成功を祈っております。いつ帰るか教えて下さい。返事を待っています。寝ても眠れません。
実際の手紙を見るとその迫力に圧倒されます。

(※野口英世記念館蔵)
字を書いたことがないから、ミミズの這ったような字です。
日本語としておかしい箇所もたくさんあります。
現代風に言うと、
・キレイな字の書き方も
・文章の書き方テクニックも
・業界の常識も
・他人の成功例も
・パソコンの使い方も
何もかも知らない状態で作り上げた手紙です。
でも≪なんとしても伝えたい想い≫があれば、100年後の私たちの心にまで届く。
当時、●●マーケティング、▲▲の法則、★★万円売上アップした成功実例といった、テクニック論に凝っていた私は、この手紙を見て≪人の【想い】に勝るテクニックは無い≫と思うようになりました。
もちろん、パソコンのチラシソフトが使えたり、ホームページの知識があったら【便利】なのと同じように、
文章を書く法則や、
手書きがいいのか印刷がいいのか?
透明袋がいいのか?紙封筒がいいのか?
夢を応援する方がいいのか?不安を煽った方がいいのか?
などの「テクニック」は、あった方が【便利】です。
これは間違いありません。
でもこうしたテクニックがいくら束になっても敵わないのが、「私は誰に何をしてあげたいのか?」という≪想いの強さ≫だと気づきました。
クライアントさんの≪アツい想い≫を引き出し
その想いを伝えるお手伝いをする。
その想いを伝えるお手伝いをする。
自分の心に迷いが出てきた時は、いつもこの野口シカの手紙を見て原点に帰るようにしています。
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